磐座八幡神社の秋祭り(大三島)

大山祇神社の秋の祭事、産須奈大祭。旧暦8月22日に行われてきたが、小中学生が活躍する祭となっている近年は、旧暦8月22日に近い土日に行われている。その1週間前の土日、大三島各地区は秋祭りで賑わう。野ノ江の乱獅子舞、大見の獅子舞と、地域によって祭りの営み方が異なるというから面白い。

9月22日の午前9時、口総地区でも祭りがはじまった。磐座(いわくら)八幡大神社の神官による神霊入れの儀が終わり、神輿を地区内に持ち帰る。「宮入前の午後10時頃に来たらええよ」、そんな地元の人の案内に誘われ、祭りに紛れ込んだ。公民館で地元の人たちは酒を酌み交わしていた。

 

うれし めでたの若松様よ?
枝も栄えて葉も茂る?

 

聞こえてくるのはドメキ唄という口総の民謡。「踊り子の衣装、ええやろ。この地区ならではや。昔はな、踊り子は男の子だけやった。今は、子どもが少なくなってしもて。女の子入れても、5人や。」ゆっくりと流れる時の中で、世話人(当屋)の男性が話してくれた。紺と白のシンプルな長半纏(はんてん)、地下足袋という出で立ちの踊り子達。受け継がれてきた伝統のスタイルだという。

刻々と時は流れる。「いつ、神輿が動き出すのか。」まだか、まだかとそわそわしているのはよそ者だけ。あー、島時間。ゆっくり待とうと諦めかけた頃、ドン、ドンと太鼓の音が・・・。

 

唄と太鼓、笛の音に合わせての踊り子と獅子舞の共演がはじまった。神の御霊を宿した神輿も動き出す。「まわせ、まわせ」掛け声に合わせ、神輿は勢いよくまわる。幾度となく繰り返される祭舞台。祭りを終えたくないという男達の気持ちが伝わる。

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午前零時、いよいよクライマックス。参道に一斉にかがり火が放たれた。神輿がなだれ込むように駆けあがっていく。その速さにびっくり。今まで行きつ戻りつだったのに。あ然としながら、参道を進む神輿を見送った。

 

火の勢いは想像以上。この日は風が参道側に吹いており、神輿は火の中をくぐるよう。火の粉も天空から舞ってくる。じっとその様を見つめる老若男女。彼ら一人一人が主役の祭りが終わった。かがり火の後始末を静かにする人。その目は、この地の伝統を守っているという誇りに満ちたものだった。

 

今治市大三島町口総3853 【会場:口総集会所周辺】

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宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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