みかん蜜のハチミツ(大三島)

甘く、芳しい香りを漂わせる「世界最古の甘味料」・・・それは、ハチミツなんだそうです。
ミツバチという小さな昆虫が花にとまり、その身体を通して生まれる黄金色の蜜。一万年以上もの昔、人々はこの甘い蜜を、大気から露のように生まれてくる神の恵みだと崇めていました。

蜂の世界は、学校のように規律整然
蜂の世界は、学校のように規律整然

現在では、栄養価の高い食品というほかに、殺菌、消炎、造血などについても研究が行われているようです。日本でハチミツの生産が始まったのは、なんと飛鳥時代。やがて時代が下り、西洋ミツバチが輸入されて養蜂技術が進み、昭和40年には8,495トンものハチミツが生産されていました。

 

でも現在はその3分の1まで減少し、国産ハチミツのシェアは全消費量の5%を割っているそうです。・・・そんな零細業界ですが、しまなみ海道で結ばれた愛媛県の島々にも、あわせて8~9軒の養蜂を営んでいる人がいます。

しまなみ海道のお土産に貴重な蜂蜜を
しまなみ海道のお土産に貴重な蜂蜜を

「蜂? そりゃカワイイわい。」と話してくれたのは、大三島上浦町の藤原清司さん(70才)。

 

藤原さんと蜂の出会いは、45年前。松山で養蜂を習ってきた友人に「蜂を分けてやるから木箱をもって来い。」と誘われたのがきっかけでした。 当時はお金も無く、買う物も今のように溢れておらず、自給自足は当たり前の時代。甘い物も欲しかったし、「ハチミツは体にいいぞ」と聞かされて、木箱をひとつ作り友人の元へ出かけました。タダでくれると思っていたところが、結構な金額を請求されてビックリ。いまさら 「要らん」 とも言えず、虎の子をはたいて蜂を持ち帰ったそうです。

しまなみ海道・大三島で養蜂を営む藤原さん
しまなみ海道・大三島で養蜂を営む藤原さん

「でも、それが良かったんかもしれん。」と、藤原さんは昔を振り返ります。「真剣に世話して、3年後には、独学でようやく蜂を2箱に増やすことが出来たんよ。コツが分かると、面白味が出てきてなぁ・・・」 その後、プロの養蜂家との出会いもあって、養蜂の世界へと踏み込んでいったのだそうです。

 

「蜂の世界は、学校のように規律整然としとるんよ。」藤原さんの話に熱がこもります。

 

「ひとつの巣に女王蜂は一匹。働き蜂は全部メスで、幼虫や女王さまの世話係、門番、蜜集めの仕事をして2?3週間ほどで死ぬ。」

 

「オス蜂は少数で繁殖だけの目的で生まれるんやけど、女王蜂と交えるのはたった一匹だけ。その直後に死んでしまう。」

 

「ほかのオス蜂は、蜜や花粉をもらってしばらく巣で暮らすけど、そのうち巣から追い出されて死んでしまうんよ。はかなかろ?」

 

女王蜂だけが生命を謳歌するのかと思いきや「今朝は、古い女王蜂を4?5匹潰してきた。」と藤原さん。

 

「えっ!女王蜂がおらんかったらどうなるんですか?」と驚くと、「働き蜂が右往左往しながら30分以内に、産卵3日以内の卵ひとつを選んでそのベッド(孔)を女王蜂用に作り変えるんよ。それが次の女王蜂になる。女王様も若くてピチピチしとる方がよかろう。」・・・飼われた女王様もつらい世界ですねえ。

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今、世界の各地で蜜蜂の大量失踪や大量死の現象が起こり、農家が大打撃を受けているそうです。藤原さんの養蜂場では、10年程前から蜂の体にダニがつき始めたことが、今一番の問題だそうです。

 

中国から黄砂に乗って飛んでくるダニは、人に例えるとソフトボールほどの大きさもあり、これが蜂に吸い付くとお陀仏になるんだそうです。深刻化する前に手を打つ必要に迫られています。

 

「もし蜂が地球上からいなくなると、人類は4年以上生きられない」・・・アインシュタインの予言の一説です。

 

蜂は作物の受粉に深く関っていて、私たちが口にする食品の三分の一はその助けを借りたものだそうですから、あながち大袈裟ではないかもしれません。

 

ところで、ハチミツといえば「レンゲ」が主流でしたが、減反や農業技術の変化で「レンゲ蜜」 は減っているそうです。でも藤原さんが作るハチミツはミカン蜜。「ほのかなミカンの香りがして味が良い」と地元でも評判です。ミカンどころ大三島の蜜だからなおさらでしょう。遠方のお得意さんも「藤原さんのハチミツに出会ってからは、もう他のには手が伸びません。」と太鼓判を押しているそうです。

大三島のミカンの花
大三島のミカンの花

一匹の蜜蜂が、短い一生をかけて集めるハチミツはなんとティースプーンでたったの一杯にしかすぎません。

 

藤原さんの「愛情」と、しまなみの「恵み」にあふれたハチミツは、ひときわ味わい深く貴重な味がすることでしょう。

 

しまなみ海道・大三島のフジワラ養蜂場のミカンはちみつ
フジワラ養蜂場
住所道の駅「多々羅しまなみ公園」で購入可
電話電話:0897-87-2347 フジワラ養蜂場
ウェブ公式ウェブサイト

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Profile

宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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