野々江&口総の盆踊り(大三島)

盆踊りといえば、夏祭りの代表格。この夏、大三島町の野々江(ののえ)と口総(くちすぼ)の盆踊りに足を運んだ。唄や太鼓だけで踊る伝統踊りは、地のもの。それぞれの集落が持つ民族風習を色濃く映し出していた。

しまなみ海道、大三島野々江の盆踊り
野々江地区の盆踊り

今年、野々江地区で新盆(あらぼん)を迎えたご家庭は10組。まず、各家庭の庭先で祖霊になったご家族との別れを惜しむ踊りをする。その後、親戚縁者やご近所の人達が一緒になって、提灯の灯りのもとに踊る。

 

びっくりさせられたのは、ご家族の代表がお位牌を背負っている姿だ。正確なことは分からないが、盆踊りが体系化され、各地で踊られるようになった数百年前から、この地域の伝統儀式となっているらしい。お位牌を入れている大きな箱は、素麺の箱で作っていると聞き、二度びっくり。

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さかきの枝葉を持って踊るのも独特の風習。唄と太鼓に調和し、力強さを感じた。「背中に負うことで、亡くなった方と一体になって、霊を慰め、送り出している感じがする」と、新盆で帰省したご家族が話してくださった。娯楽的な要素が強くなっている盆踊りだが、その本来の意味を改めて感じさせられた。

 

口総地区では、8月15日、戦没者と新盆を迎えた人の地域合同供養が行われる。その後、同じ敷地内で行われる盆踊りは、とてもユニークな演出がほどこされている。新盆を迎えたご家族の数名が仮装をして踊るのだ。様々な面をかぶった姿は何とも滑稽。「少しでも賑やかにして送り出してあげたい」、そんな思いからはじまったと聞いた。

仮面をかぶり仮装して踊る口総地区の盆踊り
仮面をかぶり仮装して踊る口総地区の盆踊り

やぐらを囲む楽しげな輪に惹かれ、私も見よう見真似で、左へ4歩、右へ2歩。とても単調な踊りに見えたが、やってみるとこれがなかなか難しい。隣のひょっとこ仮面の足元を見て、真剣に踊ってしまった。

 

帰りの車中で「あのひょっとこ仮面は何歳くらいの人なんだろうね。男性と思い込んでいたけど、小柄だったし、女性かもね。」なんて、盛り上がった。近所の人は誰だか分かっているのだろうけど、紛れ込んだ私たちには謎だらけ。盆踊りって、気軽に紛れ込める楽しさがあるなあ?

 

どちらの盆踊りも、年々、参加者が少なくなっていると聞いた。生唄の歌い手も後継者はなかなか。「お経を読むような気持ちでうたっている」と語ってくれた野々江の世話人さん。思いを伝承していって欲しい。

(2009年8月)

 

野々江&口総の盆踊り
野々江&口総の盆踊り
住所今治市大三島町野々江666-1
【野々江会場:野々江運動場】

今治市大三島町口総4168
【口総会場:蔓福寺】

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宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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