喫茶店ちぐさ、昭和の香り

2011年12月28日
松山から宇和島へと延びる国道56号線。

松山市内から犬寄(いぬよせ)峠を越えて、栗の産地で有名な中山に入り、
“クラフトの里”を過ぎて狭い谷間に流れる川沿いに進むと、
右手に古びた木造二階建ての喫茶店「ちぐさ」があります。

高速代を節約し、国道を3時間かけて実家に帰る途中いつもこの店の前を通ります。
記憶をたぐり寄せると、小学生の頃、親に連れられて何度か入った気がします。

かつては山小屋風の洒落たカフェだったと思いますが、
長年の風雨にさらされていまにも朽ち果てそうな雰囲気です。

ずっと気になっていたので、先日ちょうどランチどきに入ってみました。
平日の午後、お客は自分達だけ。穏やかな笑顔の初老のマスターが
ひとりで切り盛りしていました。

39年前、23才のとき、松山市内の飲食店を辞めて地元に戻り、開店したのだそうです。
「高度経済成長の真っ只中で、どんな商売であれ、やれば儲かったけん。
今の若い子らはこんな時代になってしもて可哀想やねえ・・・」

昭和50年頃は最もお客さんが多く、盆暮れ時期は目が回るほど忙しかったそうです。
都会に出て働いている南予人たちの帰省ラッシュで、狭い国道は大渋滞。
今は高速道路ができ、めっきり静かになりました。

「宇和島から来てくれる常連さんもおるんよ。でも皆、年を取ってしもうたけんね・・・」
と幾分寂しそうな顔のマスターでした。

「ちぐさ定食」は焼肉&コロッケ、サラダ、煮物、ご飯、味噌汁。
カレーライスは目玉焼きとサラダ付き。

料理の味も、山小屋風の店内も、昭和のまま時計が止まった感じがします。
ひっそりとあの時代に戻れる場所もいいものです。

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宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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