後藤鉱泉所(向島)

【しまなみおすすめMAP・向島】後藤鉱泉所は、しまなみ海道の向島で昔から変わらないスタイルで地ラムネを80年以上も製造している老舗飲料工場です。ラムネのほか5種類の清涼飲料水を製造販売していて、貴重な瓶を使っているため、ここで飲んでここで返却。向島に来ないと味わうことができないドリンクです。長年ラムネづくりをされてきたご夫婦の人柄もあって、しまなみ海道をサイクリングする旅人の有名な立寄り名物スポットになっています。

 

ここでしか飲めない後藤鉱泉のラムネ

これがラムネの生きる道…“地ラムネ” 飲みたい人集まれ!

 

ガラス瓶のなかでカラカラと踊るビー玉、シュワッと広がるさわやかな甘さ、夏の昼下がりに恋しくなる “ラムネ”。 しまなみ海道でつながる向島(広島県尾道市)、細い路地の一角に、ラムネの清涼飲料水を製造販売している『後藤鉱泉所』がある。

しまなみ海道・向島の地ラムネが有名な「後藤鉱泉所」の外観
サイクリングツアーで後藤鉱泉所に立寄り

木の扉、木枠の窓、板張りの天井…レトロな店構えに思わず引き寄せられる人は多いに違いない。間口にはケースが積み上げられ、旧式の冷蔵庫に瓶入りの飲料水が冷やされていた。

 

三代目の店主、後藤さんが語る

「一本飲んでみなさい」
プシュッと栓を開けてくれたのは、ご主人の後藤忠昭さん。

後藤鉱泉所のサイダーも昔ながらの瓶、ラベル、味
サイダーも昔ながらの瓶、ラベル、味

「自分は三代目。表の看板は初代のまんまよ」
宇津井健似の男前の笑顔で、後藤さんが語る。開業は昭和5年。80年以上営業を続ける老舗だそうだ。

 

「うちは女房と二人で切り盛りしとるから、今の生産量が精一杯。飲料水を作りよるのは、広島では二軒だけ。」

 
後藤さんの所では、ラムネのほか5種類の清涼飲料水を製造販売している。学校の教室ほどの広さの工場内を見せてもらった。「飲料水の仕事は、えらいんよね(しんどい)・・・」と言う。手間がかかり、運ぶ際はズシリと重い。ビンだとなおさらだ。

 

「じゃけど、世の中はゴミの山でしょう。便利さに流されてビンからペットボトルの時代になったけど、リターナブル(容器再使用)の時代へ戻らなイカンと思うんじゃがのぉ。」

 

「夏祭りや納涼祭でラムネを売ると、飲み終わってポイッとゴミ箱にビンを捨てよる。リターナブル瓶のことを皆知らんのよ。」

 

奥様の勝子さんは、広島の山間部出身。42年前にお見合いでお嫁に来たそうだ。「辛抱ばかりです」と言いながらも明るく元気に笑う。最近は、小学生が社会見学で地元の工場や会社を回って来るそうだ。

しまなみ海道・向島の「後藤鉱泉所」でラムネをいただく
ポンッとラムネを開栓する女将さん

「うちではラムネの話をして、工場を見学させて、最後にラムネを一本飲ましてあげるんよ。ほんなら大喜びでねえ。子どもらの一番人気よ。」

 

「初代が凝った人でね、この建物は上等な木材でしっかり作ってあるから、今だに狂いがない。私らが仕事をやめた後も建物は残したいけど、どうしたらええんじゃろうね。」

 

「そしたら孫がね、学校でラムネブームになったらしゅうて、鼻が高かったんじゃろうね。”ボク、ラムネ屋になる”って言うてからにねぇ・・・」

 

そう嬉しそうに話してくれた。

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全国的にも数少ない鉱泉所

ラムネの由来とされるレモネード(レモン風味のソーダ水)は、イギリス生まれ。幕末の頃、日本に持ち込まれ、明治期に国内全域に広まった。庶民の飲み物として親しまれるが、やがて新しい飲み物(コーラ等)に押されてしだいに衰退していく。昭和40年代にレトロブームで再び光を浴び、大人には懐かしく、子どもには新しい飲み物として人気を復活させるが、その後、缶飲料や自動販売機の登場、スーパーの出現で、ラムネを売る小売商店の減少とともに再び衰退する。日本の炭酸飲料水の歴史を作ってきたのは各地の『鉱泉所』なのだが、現在も製造を続けている所は数えるほどしかない。

後藤鉱泉所のラムネを購入する様子
ラムネ、一本くださ~い♪

しかし、最近はテレビや雑誌の取材のおかげで、遠くは北海道からわざわざ足を運んでラムネを飲みに来る “地ラムネ” ファンのお客さんもいるそうだ。ラムネのリターナブル用ビンは製造が中止されて久しく、貴重な物のため、遠方への発送は出来ないからだ。

 

「どうしてもビンをくれ言うお客さんには、傷入りで使えなくなったビンをあげるんです。それでも、ええもんもろた言うて喜ばれとるね。」

 

しまなみ海道・向島の「後藤鉱泉所」の女将さんと記念写真
後藤鉱泉所の名物女将さんと記念写真

鉱泉所の存在は、観光にも一役買っているようだ。汗をかいた後の一杯、と立ち寄るしまなみ海道サイクリストの姿も多い。

 

「ビールも同じやけど、ラムネもビンが一番美味い。缶やペットボトルはガス(炭酸)量がどうしても低いけんな」と、ビン入りの美味しさの秘密をこっそりと教えてもらった。

 

甘味を抑えたすっきり味が特徴の後藤ラムネ。

 

遠路はるばる飲みに来る価値、充分にありなのだ。

2009年取材

しまなみ海道・向島の地ラムネが有名な「後藤鉱泉所」
2009年取材時の懐かしい写真

※2021年4月に元広島県竹原市職員の森本繁郎さんが事業を引き継ぎ、4代目として後藤鉱泉所の新たなスタートを切りました。

 

後藤鉱泉所の外観
後藤鉱泉所
住所広島県尾道市向島町兼吉3-755-2
電話0848-44-1768
定休日日曜・祭日
営業時間8:30~17:30頃
料金ラムネ 1本150円
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Profile

宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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