ちょっとマニアックな離島訪問記<三角島編>

小春日和に誘われて、安芸灘とびしま海道へ。

 

今日のターゲットは、大崎下島の北の目前に浮かぶ「三角島」という小さな島。“さんかく”ではなく“みかど”と読む。車を3台も積めば一杯になりそうな小型の双頭船が、対岸の港へ向かうのを見る度に旅心をくすぐられていた島をめざしてみた。

 

 

 

大崎下島から三角島へ

大崎下島の久比(くび)から一日に7往復している船に、クリニックや買物帰りのおばあちゃんたちと一緒に揺られてわずか6分。背後に鉄工所のクレーンが目立つ港の中の浮き桟橋に到着。

下船際、「一周する道はないんよ。あっちは島の裏側まで行けるよ。こっち道の先は砂浜で行き止まり。お昼は食べたん?」とおばあちゃんが声をかけてくれた。島には食堂も商店もないのだそうだ。「飲み物やったら自販機が一台あるけんね」と教わる。空腹だといえば家に招いてくれそうな勢いのおばあちゃんにお礼を言って、さあ島探検へ。

 

海沿いの小道を走る

まずは、反時計回りに海沿いの小道を走ってみる。素もぐりで漁をしている漁船が一艘。サザエ採りでもしているのだろうか。潮の引いた海辺では海草を干したり、貝採りをしている人影がちらほら。畑には、大根、白菜、キャベツ、ひょうたんかぼちゃが植わり、倉庫代わりに4台の廃車が置かれている。

信号も無く、車の往来とは無縁の島だけに、静けさはバツグン。頬をなでる潮風を感じながら1.5kmほど進むと、コンクリートの小道はすっぽりと藪に覆われてフィニッシュ。

どんずまりを確かめて、道を引き返していると、三輪自転車にモンペ姿のおばあちゃんとすれ違った。「みかんをもぎに行くんよ」と年輪を刻んだ穏やかな表情で笑いかけてくれた。 のんびりとしたカンジがたまらなく心地よい。

 

鉄工所に響く金属音

港にもどり、残りの道を探検。鉄工所に響く金属音の中をくぐりぬけて、起伏をひとつ越えて900mほど行くと島の裏側に出た。砂利交じりの長い砂浜が広がっている。 「夏に孫らが帰ってきたら、いつも泳ぎよるんよ」とおばあちゃんが言っていた浜だろう。 こちらの道も行止まり確認終了。

 

おばあちゃんに自販機を尋ねる

港へ戻る途中、今度は手押し車のおばあちゃんに遭遇。これから畑仕事に行くそうだ。自販機のある場所を尋ねると「工場の所にあろうがね。私も畑の帰り道によく買うんじゃがね」と言うので付いて行く。

案内されたのは、砂浜への往復で通った場所。見落としていたようだ。「ふたのあるコレが、残しても後からまた飲めるけん、ええよ」とすすめられたのは、キャップ付きのオレンジジュース。小分けで飲めるのが便利なんやね。「でも、今の時期はみかんがあるけん、買いよらんけどな」と言い残して、おばあちゃんは畑へ。

では、島でお金を使うならココしかないという自販機で、上陸記念に缶コーヒーを一本購入。鯉のマークが入る中国地方限定缶コーヒーは、甘さしっかり、ぶちウマッ!島の風土にピッタリの味かな…?

 

三角島のおよそ90分の滞在

小さな島だけど、およそ90分の滞在時間は、島のおばちゃんたちとの会話でまたたく間に過ぎた気がする。 一緒に来て、先に港で待っていた友人は「もう一人は何処に行ったん?コレ持って行きなさい」と乗客のおばさんから、みかんをしこたまもらっていた。“見知らぬ旅人が2名上陸した”という話を聞きつけて、おすそ分けを用意してきたようだ。島の情報伝播はメール配信並みのスピードだ。

ただ走るだけじゃない島の魅力を、たくさん感じさせてくれた“三角島”。きっと訪れるサイクリストはほとんどいないだろうけど、自転車だからできる気ままな旅の面白さや、サイドトリップの楽しさが、そこかしこに潜んでいる場所だった。それを見つけ出してエンジョイできるかどうかは感性次第かも
しれない。だけど、橋でつながらない島へ、一歩踏み込んだ旅をしてみるのもいいよ!とこっそり宣言しておこう。

 

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Profile

宇都宮一成うつのみやかずなり

自転車好きが高じて10年かけて夫婦でタンデム自転車による世界一周を敢行。88カ国を巡った。帰国後、NPO法人シクロツーリズムしまなみでポタリングガイドとして島走中。しまなみ海道の魅力再発見のため島々をすみからすみまで走る回る毎日を過ごしている。

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